思い出話 その二


毎日あらわれる学生食堂おばさん

 私が学生登録されていたのはベルリン工科大学でした。どこの大学でも安い学生食堂があるように、この大学にも一度に数百人ぐらい入れそうな大きな学食がありました。お昼どきには、大勢の学生でにぎわいます。

そこで学生食堂おばさんの登場です

 どこからともなく現れる、そのおばさん、というか、おばあさんという方が正しいかもしれません。頭に毛糸の帽子をかぶり、杖をついて学食内を歩いてきます。

 そして…、席についている学生を順番に回り、何やら聞いています。たずねられた学生は首を振りました。すると彼女は隣の学生に聞きました。学生は、また首を振りました。こんなことを何回か繰り返しているうち、ある学生が彼女に何やら紙片を渡しました。

 そうです。彼女は学食の食券をもらっていたのです。金額にして2マルク程度(当時約160円)ですから、券を何枚か持っている学生は上げることもありました。彼女は昼になると、毎日のように学食に現れ、食券をもらっていました。

 あるとき、私の数メートル先の学生の所に彼女は来ました。その学生が断って、次の学生も首を振りました。だんだん私に近づいてきました。そして、とうとう私の所へ…。と思ったら、私の前をすーっと通り過ぎて次の学生に聞いています。おいおい、食券たかるのに、外国人だからって俺を無視するなよ、って感じです。ちょっとがっかり。

 無事、食券をもらった彼女は早速、お食事タイム。何気なく見ると、ゆでたジャガイモは丁寧にフォークでつぶしています。へぇー、ちゃんと流儀があるんだ、などと感心しました。彼女が、食費にも事欠くほど困窮しているのか、食券をたかるのが趣味なのかは分かりません。その後どうしたかな。今でも思い出す学食の風景でした。

学食はドイツ語で「メンザ(Mensa)」っていうんだよ
これがベルリン工科大の学生食堂です


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