|
その夜、西ベルリン警察本部の当直だったヘルマン・ベック警視。「電車が不通」との最初の通報を午前1時54分にシュパンダウ署から受けて以来、ひっきりなしに市内各署から封鎖に関係する情報が入ってきた。普通なら、この時間は仮眠をとっているはずだったので、ベックは下着姿のままで電話での対応に追われていたという。 最初は何が起きているのか理解できなかったが、境界地帯に東ドイツの部隊が集結しているということが分かってきた。ベックは悩んだ。もしこれが西ベルリンへの侵略であるなら…、との危惧を抱いたベックは金庫から機密書類を取り出し、西ベルリン防衛のための警報を発動すべきかどうかを上官と相談した。防衛警報を出すと、米英仏の西側諸国をも大々的に巻き込むことになるので、大混乱に陥ることは必至だ。 結局、情報を分析しているうちに、東ドイツの部隊が境界を越えて西ベルリンに侵入しているケースはない、ということが分かった。そのためベックは防衛警報より軽い「E1」警報を発令、西ベルリン警官13,000人を非常呼集して、境界線付近の警備・巡回に当たらせることにした。 |